はじめまして!

これからの住環境や都市環境は、何を求められ、どのように変わっていくのでしょうか。

世界中がコロナ禍に巻き込まれ一年が経ちます。時代は世界人類に生き方や意識の変革を求め、新たなステージへ移行するよう誘導しているかのようです。私たちが変わるまでコロナは収束しない、今そんな声が聴こえてくるような状況さえ感じられます。そのような中、建築や都市の空間はどのようなヴィジョンを描いて進んでいくとよいのでしょうか。

私は、大学で建築学科を専攻し、総合建設会社で30余年にわたり建築設計に関わってきました。企画計画や営業設計といったプロポーザル活動から、設計業務、工事監理業務に至るまで、部署を跨いで建築設計の一連のプロセスを経験し、数多くの建物づくりを実践してきました。建築の設計図は、条件の付加や見直し、検討検証を幾度となく繰り返し、生き物のように変わっていくことが多々あります。その中で、トータルな視点で設計プロセスを見渡したときに、それぞれの段階にはそれぞれの大切な役割がありますが、なかでも初めの計画段階での取り組みの重要性を感じます。原点がズレていると、最後までズレてしまいます。建設の趣旨やコンセプト、あるいは「建築への思い」といったプログラムが、出来上がった建築の価値やクオリティに大きく影響します。

近代建築は、それまでの伝統的建築に代わり、新しい素材と技術によって、新しい機能や表現を実現させました。さらに、均質的な画一性から脱却し、個性や地域性を大切にした有機的で人間的な空間や建築への希求と共に、様々な機能の実現と自由な表現が試みられ、現代に至ります。素材や構法等建築技術の発展も目覚ましく、高度な機能性能を実現することが可能な時代となってきました。個々に内在するプログラムや思いを、かなり自由度高く具現化できる技術的背景が、現代には既にあるのです。

ギリシャ語に「全体性」を意味するholosを語源とする「holistic」という言葉があります。同じくholosの派生語としては、whole(全体)、heal(癒す)、health(健康)、holy(聖なる)などがあります。医療界では、holistic care(総合的なケア)、教育界では、holistic education(知識ではなく人間の生きる意味を知るために総括的な実践を旨とする教育運動)、のように使われているようです。

私は、心身一体的全人的で、総体的な、心地よい空間や建築を「holistic architecture」と呼ぶことにします。全体を総括的に関連させバランス良くつなげることによって、心地よく居心地の良い holistic architecture が生まれるものと考えます。この holistic approach において、関係性と幸福感は特に重要な評価軸になると思います。人と人、人と地域・街・都市、人と自然・地球環境あるいは文化的景観、といったつながり、すなわち関係性が、どのように築かれていく場所となるのか。また、生命力の源になるようなワクワク、ウキウキするような喜びが感じられ、物理的精神的に豊かで心地よい幸福感に浸れる空間や場所にインスパイアできるのか。そのような建築の機能と様相を決定づけるプログラムにおいて、「建築への思い」が総括性を実現させる大きな原動力(エネルギー)になると思います。

古今東西の建築空間や環境を、今一度振り返り、思いや生命力といったことも含めて捉え直してみたい。そして、これからの時代に相応しい住環境の在り方を模索しながら、建築づくり、住まいづくりに活かして行きたいと思っています。

最後まで読んでいただいて、誠にありがとうございます。

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