ファラオ三代の壮大なピラミッドが、オリオン座の三ツ星の配列に呼応して、ギザ台地の砂上に白く輝く。
シンプルさを極めた純粋な幾何学形態と想像を超えるスケールの量魂は、無限大の宇宙にシンクロするパワーを放ち、古今東西見る者の心を震わせてきた。
精巧な純粋幾何学の巨大なモニュメント
今からおよそ4500年前、古代エジプト古王国時代、カイロの西方メンフィスに近いギザに、約120年をかけて建てられた3つのピラミッド群が、オリオン座の三ツ星の配置と一致して並ぶ。北からクフ王、カフラー王、メンカウラー王、3代の巨大な石造の正四角錐形墳墓であり、絶対的な権威を未来永劫に誇示しようとした記念碑である。
その中で最大のものがクフ王の大ピラミッドで、底辺が約230m、高さが約146mという規模を誇る。底面の基壇は、水を張って水平を保ち、東西南北軸に正確に揃えられた。カフラー王のピラミッドと南東の角同士を結ぶ延長線は、太陽信仰発祥の地ヘリオポリスの中心に立つオベリスクを指す。また、奇しくも底辺と高さの比が黄金比になるように、四角錐は地表に対し約51度の勾配で傾斜している。計算し尽くされた精密さを実現させる叡智と技術が秘められている。
大きな切石を段々に積み、間を小さな石で埋め、表面を上から白色石灰岩で滑らかに仕上げた。頂部に金箔のキャップストーンが輝いていた。切石は一つが1㎥程度で平均2.5トン、大ピラミッドには約230万個も積まれ、10万人が20年の歳月をかけて築いた計算になるという。鉄の工具も滑車もまだなかった時代に、どうやって巨石を採取し、運搬し、積んだのか、今なお謎に包まれている。
ファラオの来世の住み処
大ピラミッドの中心部に55㎡ほどの王の玄室があり、石棺が安置されている。その真上に、切り妻構造の天井で上部の大荷重を横へ逃がす重力軽減の間が設けられている。王の間の下方に女王の間があり、さらに下方の地下部に副葬品の格納庫がある。王と女王の室には2本ずつ20㎝角程度の通気孔があり、シリウスなどの星に照準を合わせて外部に通じている。
正規の入口は北面に設けられ、当初盗掘防止のため巨石で封印された。内部にトンネル状の通路や縦孔が迷路のように続く。
ピラミッド・コンプレックス
ピラミッドを中心に、王妃のピラミッド、王族や高官のマスタバ(個人墓)群が並び、東西軸に対称に建築複合体が構成されている。それぞれのピラミッドの東側に葬祭殿、ナイル川の岸に河岸神殿を持ち、対になる二つの建物は参道で結ばれ、ミイラが運ばれた。
大中二つのピラミッドの間に、冥界の入口の守護者として悠然と座る大スフィンクスは、一枚岩から彫り出され、獅子の体にカフラー王の頭部をのせる。全長約74m、高さ約20m。夏至の太陽はスフィンクスの真後ろに沈む。
孫のメンカウラー王のピラミッドは、底辺が約105mとなり、およそ半分以上も減少し、総体積も約10分の1の規模に大きく縮小されている。財力や労働力を維持するのは至極困難であった。これ以降、ピラミッドは影をひそめ、墳墓の形式も大きく変わっていった。
時空を超える美の力
古代ファラオたちが永遠不滅の太陽神の威光に憧れて誕生したピラミッドは、初原的な造形に収斂され、余計な装飾は排除された。曖昧さがなく純粋で、崇高な力強い美のオーラを放つ。
ルーブル美術館のガラスのピラミッドをはじめ、エジプト旅行を機に抽象幾何学的デザインを開花させた近代建築家のルイスカーンなど、現代においても多くの芸術家にインスピレーションを与え、創造力を喚起させている。
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